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簡易裁判所の調停(民事一般調停)について

石割 誠

1 「調停」というと、家庭裁判所の離婚調停や遺産分割調停のことが思い浮かぶ方が多い

 かもしれませんが、簡易裁判所でも交通事故の交通事故の損害賠償請求や貸したお金の返

 還請求、商売上の売掛金請求等々の民事の一般的な紛争について調停が行われています。

手続としては、「訴訟」が裁判官が証拠に基づいて事実を認定し法律を当てはめて国

家機関としていわば権力的(強制的)に結論(判決)を出すという構造であるのと異な

 り、「調停」は基本的にいわば話し合いであって、裁判官と民間から選ばれた調停委員二

 人がそれぞれの事件について調停委員会を構成し、当事者双方から話を聞いて言い分や争

 点を整理し場合によっては解決案を提示するなどの方法で、互いが譲歩して紛争解決の合

 意をすることを仲介するというものになります。この基本的な構造は簡易裁判所の調停と

 家庭裁判所の家事調停で変わりありません。

なお、離婚調停,遺産分割調停などの家事事件では、紛争が夫婦間や親族間で発生した

ものであることから、いきなり厳格な手続に依り対立構造が鮮明になる訴訟ではなくて、

 まず当事者間で親族内の実情に沿った話し合いや互譲を試みてもらうというような意味

 で、訴訟等を提起する前に必ず調停を経なければならないという調停前置主義が採ら れ

 ています。

2  調停は、最初にしなければならない裁判所への申し立て、手続が始まった後の証拠資

 料の提出、その他の手続において守らなければならないルールが「訴訟」の場合ほど難し

くなく、また、調停委員が中立性が損なわれない程度にいわばアドバイスや助力してくれ

 ることもあるので、弁護士などの専門家に依頼しなくても当事者が自分で対応できること

 も多く、実際にも弁護士などの代理人が付かないで当事者本人だけで行われている事件も

 多くあります。また、たとえば事実関係にそれほどの争いがなくて第三者が入って話し合

 えば早めに合意できそうだとか、事実関係を証明する証拠資料が不足していて訴訟を起こ

 すことは躊躇されるが専門的な知見のある第三者のもとで争点を整理をしてもらいながら

 話しをすれば相手方と合意することも期待できるなどという場合にも、訴訟ではなくて調

 停手続を選択するメリットがあるといえます。申立の時に裁判所に納める印紙代も訴訟の

 場合の大体半額になっています。

   どういうわけか最近は調停事件の数が減っているように感じられます。10数年前く

 らいまでは調停が行われる日には裁判所の掲示板に当日行われる調停事件の番号がかな

りの数書かれていて待合室も混雑していたような記憶がありますが、今はそういうこと

はないようです。

3 滅多にないことではありますが、なかには、相手方が裁判所からの調停の呼出状を受け

 取っても無視して出頭せずに結局何にもならなかったとか、基本が話し合いであるため例

 えば当事者の一方が誰がみてもまっとうなことをいっていて結論も合理的だという場合で

 も片方が嫌だと拒んでしまえば調停は不成立になってしまうというような制度上の限界は

 ありますが、調停委員に適当な人がついて上手に手続を進めてくれる場合には、最初合意

 することはとても困難だろうと思えるような事案でも合意できたといいうような事例もみ

 られるところです。訴訟手続に比べて簡易迅速な紛争解決の方法として検討してみる価値

 は大いにありといえると思います。

  抱えている紛争やトラブルについて、訴訟を起こすのがいいのか調停が適当なのか、そ

 れとも裁判所外での紛争解決手続(ADR)を利用するのがよいのか、などと迷った場合 

 には、まずは弁護士事務所や様々な機関で行われている法律相談などを利用するのが良い

 と思います。

4 裁判外紛争解決手続については、様々な分野で、一般の人が利用しやすく、また、結論

 が出た時の実効性も相当程度期待できるような制度がどんどんと出てきているといえると

 思いますが、それについてはまた別の機会に紹介しようと思います。





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