• 石割 誠

自筆証書遺言に関する法改正

最終更新: 9月12日

1⃣民法(相続法部分)の改正により、自筆証書遺言の方式が一部緩和され(平成31年1月

13日から施行)、また、自筆証書遺言について遺言者から申請を受けて法務局で保管す

る制度が新たに設けられることになりました。(令和2年7月10日から施行)

遺言は、遺言者の真意が正しく反映されるようにし、また偽造変造を防止するなどの

ために、厳格な要式が定められています。(定められた方式に従って作成されていなけれ

ば遺言としての効力がない。(民法960条,967条)

遺言の方式としては、通常時のものとしては自筆証書遺言,公正証書遺言及び秘密証書

遺言の3つがあります。

このなかで多く利用されているのは自筆証書遺言と公正証書遺言です。


2⃣秘密証書遺言については、遺言者が作成した書面に署名・押印して封印し、公証人(元

裁判官や元検察官が多い)及び証人2人以上の前に提出して公証を受けるという方式であ

り(970条)、遺言書の存在までは秘密にできないが遺言の内容は秘密にすることができ、遺言書の本文をパソコンなどで作成することもできますし、遺言者が亡くなってから「遺言者がそんな内容の遺言をするはずがないから偽造だ」などと争いなったり偽造変造される虞も少ないと考えられますが、決められた方法で封印しなければならず公証人や証人の関与が必要なことでやや面倒であるためにそれほど多くは利用されていないのが実情でしょう。また、公正証書遺言のように公証人が遺言内容までチェックするわけではないので遺言内容に問題があって結局無効になったり実現不可能であったとか、公証人役場で保管まではしてくれないので自分で保管しているうちに紛失してしまうなどの危険性も否定できません。


3⃣そこで、よく利用されている自筆証書遺言と公正証書遺言ですが、次に述べるような方式です。

自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し押印するという方式で作成され

(968条)、作成後の保管は秘密証書遺言と同じで遺言者の責任で行われ、遺言者自身や同人から頼まれた者などが保管することになります。遺言者以外の者の関与が不要なので気軽に利用でき、遺言書を作成したこと自体も遺言内容も秘密にできるという長所がありますが、他方、全文を自書しなければならないのでパソコンなどを使用できないという不便さがあり、公正証書遺言の場合のように公証人のチェックを受けるわけではないので気づかないうちに決められた方式に違反していて無効になったり、遺言内容が実現できない内容だったという虞はあり、遺言者死亡後に本当に本人の遺言なのかどうかが争いになったり、紛失や偽造変造がされる危険性も少なくありません。そのような事情から、「本気で遺言をしようとするのなら(遺言内容を実現しようとするのなら)自筆証書遺言ではなくて公正証書遺言でなくてはだめだ。」と言う専門家もいます(私自身も、相談を受けた場合には同じようなアドバイスすることが多いです。特に遺言により影響を受ける人達(例えば、推定相続人など)の関係が良好とはいえないケースや、遺言内容で不利になる人が出てくるケースなどでは、公正証書遺言の方法で行うのが無難と考えられます。)

 一方の公正証書遺言は、公証人が証人2人以上の立会いの下に、遺言者に面接してその

意思を確認しながら作成し、作成後は遺言書の正本を公証人役場で保管しますので(969

条)、遺言が無効であったり、内容が実現不可能であるというような虞は少なく、後に

なって遺言内容が本人の意思なのかどうかが争いになることも少なく、紛失や偽造変造の

虞もほとんどないということになります。また、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合に必 要となる遺言者死亡後の家庭裁判所での「検認」という手続が不要であるというメリット

もあります。他方で、公証人の手数料が必要になり(遺言対象の財産の価額や遺言により

財産を受ける人数などにより算定される【算定方法などはインターネットで検索可能】),

原則公証人役場まで出かけなければならず(事情により出張料を負担して公証人に入院中の病院などに出張してもらうことができます)、証人2人以上を遺言者側で用意する必要があり、またそれらのために遺言の存在や遺言内容を秘密にしておくのが難しいという遺言者の置かれている状況によっては利用しにくい点もあります。そのために、公正証書遺言はハードルが高くて気軽に利用できないというケースもありうるところであり、公正証書遺言ではなくて自筆証書遺言の方を利用したいとの需要は実はかなり高いとも言われています。


4⃣以上が通常時に利用される3つの遺言の方式についての概要及び大雑把な特徴ですが、 今回の民法相続法部分の改正では、上記のように需要が相当にあるのだと言われている自筆遺言証書について、従来指摘されていた問題点の一部を修正して利用しやすくしようとしています。その概要は次のとおりです(詳しいことは、ご自分で解説書をご覧になったり当方にご相談ください)。

①遺言対象となる相続財産を別紙に目録として添付する場合には、その目録の方は自書

 する必要はなくパソコンで作成したり代筆でもよく、不動産登記事項証明書などのコ

 ピーでもよいことになります(本文の方は従来どおり自書が必要)。ただし、自書に

 よらない目録については、変造などの防止のため各ページに遺言者の自書及び押印が

 必要になります(968条2項)。この改正によって沢山ある相続財産の内容を自書で

 書き写さなければならないなどの手間がかなり軽減されると期待されます。

②自筆証書遺言について法務局での保管制度を新たに設け、作成した遺言書を法務局に

 もっていって申請すると、形式面の審査(遺言内容の審査まではしてくれない)を経た上で

 保管してくれることになります(新設の「法務局における遺言書の保管等に関する法  

 律」)。これにより遺言書の紛失や偽造変造の虞などの心配はほぼなくなると考えら

 れ、後になって遺言が本当に遺言者のものかどうか怪しいなどという争いも出にくくな

 ると考えられます。遺言者(遺言をしたかもしれない人)が死亡した後は、誰でも法務

 局に対して自分が関係相続人等(相続人、受遺者等)に該当する遺言書が保管されている

 かどうかに関する証明書の交付を請求できるとされており、遺言者死亡後に遺言書が発

 見されないままになってしまうというようなことも防止されると期待されます。その

 他、この制度を利用した場合には家庭裁判所の検認手続も不要になります。遺言書の保

 管申請や遺言書の有無に関する証明書の交付申請などには手数料が必要になります。

 (金額未定 施行日までに定められる)

  

  





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